防水屋は建物など内部へ漏水しないように防水工事を行う職人です。最近では、夏場のゲリラ豪雨や台風の風雨レベルがあがっており、防水工事に対してかなりニーズが高まっています。
そんな防水屋が独立してやっていけるのか、メリット・デメリット、必要資格、注意点など調べてみました。独立を考えている防水屋さんは是非、参考にして下さい。
防水工事で独立できるのか
まず重要なのは、防水屋としての経験です。塗膜防水やシート防水など、防水工事の種類は多岐にわたります。入社した会社で様々な防水工事を経験する事が重要になります。元請のゼネコンや工務店との人脈作りや同業者との横の繋がりを作るように意識しましょう。また、後々、独立に対して理解があるかも確認しておくとよいでしょう。
防水屋で独立した際の年収の目安
「令和2年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」によると防水屋の年収は平均433.7万円、月収は27.7万円となっています。全業種の一般労働者全体の平均値307.7 万円と比べると高めですが、建設業全体と比べると低めの年収の業種と言えます。
月給だと、20代で月18万円程度、30代月に30万弱、40代で月に30万円程度になっています。独立した場合には、一人親方の場合には年収500万円程度のようです。中には1000万という方もいるようです。そこまでいこうとすると、ゼネコンや規模の大きい工務店などとコネがあり、コンスタントに仕事をもらえる営業力、仕事も納期までにきっちり終わらす能力、営業としての社会人としてコミュニケーション能力があるなど、総合力が求められます。
防水屋で独立するメリット
防水工事というのは雨が降る以上、必要とされる職業です。経験ややっていく自信があれば独立するメリットは大きいかと思います。以下、防水屋で独立するメリットを詳しく紹介していきます。
防水工事は需要が多い
建物の屋上や戸建ての屋根など、防水工事の保証期間はおよそ10年です。しかも、漏水 してからでは遅い為、定期的に防水工事を行う必要性があるので、防水工事に対してニー ズがなくなる事はありません。特に、日本は夏は酷暑、冬は雪が降るくらい寒くなり、建 物には非常に厳しい環境です。その為、防水工事を行った箇所への負担は非常に大きく、 劣化するスピードも昔に比べて上がっているので、常に注意しておくべき場所です。
年収アップが見込める
もちろん会社を通さず売り上げが立てられるので、当然利益アップに繋がり年収があが ります。近年では、建設業の従事者の高齢化が問題になっています。高所作業や重量物を 持つ、暑さや寒さにも対応しないといけない為、高齢者には負担が大きくなっています。 その為、働き盛りの方は、やればやるだけ仕事は入ってくるはずですので、独立するリ ターンは大きいと言えます。年齢的に若い方であれば、従業員を雇わず一人で仕事すれ ば、人件費もかからないので特に利益アップに繋がります。
自分で仕事の量をコントロールできる
これは独立した人の得られる最大のメリットかもしれません。土日祝も関係なく働いたか ら、この辺の平日はちょっと休もうとか、子供の学校の行事に参加したいからこの日は休 もうなど、自分の体や家族と相談したりする事で、仕事量をコントロールでき、充実した 生活が送れるようになります。また、お金の処理や事務仕事もしないといけなくなる為、 平日に銀行や役所へ行かないといけなくなる為、逆に都合がいいかもしれません。
防水で独立するデメリット
防水工事というのは水に対する最後の砦になります。作業に問題があり、漏水が発生し、家電、家財道具、建物の躯体へのダメージなどに繋がり、賠償事故が多く発生する可能性があります。賠償保険にも入りにくい為、リスクの大きい業種と言えます。また、防水工事に使う材料は重い物が多いので、腰やひざなど体を痛めて仕事が出来なくなり、収入が得られなくなるというリスクも考えなくてはなりません。
賠償事故が起きることがある
上にも表記しましたが、漏水による賠償問題が発生します。防止工事に対して、施工に 対して10年保証しますなどと、保証書を発行しますが、作業に問題があった場合、責任 は全て自分に降りかかってくることになります。施主や元請に対して費用の請求は当然出 来ませんので、自分で材料費や家財道具等に対する賠償金額などを負担する事になります。
収入が不安定なことがある
独立すると、工事だけではなく、「仕事を取ってくるのが一番の仕事」になります。ゼネ コンや工務店とコネがあればいいですが、そうではないと収入が不安定になります。ま た、雨が降ると作業ができない場合があります。ひどい場合、通勤中の事故、作業中のケ ガなどにより、仕事を休まないといけなくなるかもしれません。そうなると、収入がなく なるので資金に余裕が無い場合、その月や次の月の支払いが滞ったりしてお金の借りるな どの工面が必要になるかもしれません。
防水屋として独立するために必要な準備とは
ここでは独立する為に必要な道のり、費用面、準備する物、必要な資格などをご紹介していきます。
独立後に頼りになる人脈づくり
会社勤めの時は、営業や社長が取ってきた仕事をこなすだけでいいですが、独立するとそうもいきません。ゼネコンや工務店ともコネをつくり、コンスタントに仕事が入ってくるような関係性を築かなくてはいけません。また、防水屋同士でも繋がりを持ておくと、知り合いの防水屋の仕事を応援に行ったり、こちらの仕事量が多く1人ではさばけそうになく、期日までに終わりそうにない場合に助けてもらったりと、仕事がもらえたり、自分を守れる可能性もあります。また、仕事関係の話や相談などもできますので、ただライバル視するのではなく、横の繋がりも大切にしておきましょう。
運転資金を準備しておく
防水屋として独立する際に、いわゆる「一人親方」としてやっていこうとするならば、2〜3ヶ月ほどの運転資金があれば大丈夫です。事務所も自宅と兼用できれば、新しく倉庫などを借りる必要もありません。ただ、建設業許可証を取得してやっていこうとするならば、資本金500万円が必要になります。加えて、新たに倉庫や事務所などを借りなければならないので、運転資金とあわせて1000万円ほど必要になります。自分で準備できなければ、銀行などからお金を借りる必要が出てきます。低金利で条件がいい融資を受けられそうな金融機関を選ぶようにして下さい。
独立後に自分で使える工具や備品
独立する際に工具などが必要になりますが、独立前と特にかわりません。
- 安全保護具(ヘルメット、安全靴、フルハーネス、保護メガネ、防塵マスク、軍手)
- 工具類(ハンマー、皮スキ、カッター、バケツ、はかりなど)
- 電動工具類(サンダー、振動ドリル、インパクト)
- 重量物を運ぶ手押し台車
- 移動に使用する車両(ハイエースなど)
などでしょうか。いる道具・いらない道具は各自の施工分野で変わってくると思います。 例えばアスファルト防水をする場合、ガストーチが必要になるので、業務用のガスボンベ が必要になったりします。ただ、そういう特殊なものは専門業者からリースすればOK です。必要な物があれば、後々揃えていきましょう。また、材料をストックしておく場所 も必要になるかもしれませんので、頭に入れておいた方がいいでしょう。
信頼につながる資格の取得
独立して依頼数を増やすためにはお客様からの信頼も大切です。ここではお客様からの信頼につながる資格を紹介します。
防水施工技能士
いくら経験があり、実績があったとしても初めての取引の際や、仕事を得る為に自分の経験・実績の証明にもなりますので、この資格取得は必須と言えます。防水施工技能士は国家資格になります。アスファルト防水、塗膜防水、シーリング防水など9分野に分かれていますので、自分の得意分野は取得するようにしましょう。時間を見つけて、今までやった事のない工法にも挑戦して、施工分野を広げていくのもいいかもしれません。
受験資格を得るには、2級の場合、実務経験が2年以上必要となります。(学歴により実務経験不要)、1級の場合は7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験が必要になります(学歴により必要な実務経験年数が異なる)。学科試験と実技試験がありますので、両方とも合格する必要があります。学歴により受験資格が大きく異なりますので、取得を考えている方は、募集要項をよく読むようにして下さい。
危険物取扱者
使用する材料によっては危険物指定されている物もあります。危険物取扱者の資格を持っていなくても、防水屋としてやっていけますが、自分の仕事の分野を広げるためにも取得しておくといい資格でしょう。
有機溶剤作業主任者
この資格は取得必須になります。特に塗膜防水の施工がメインとするならば、この資格を取得していないと仕事ができません。なおかつ、防水工事の材料はシンナー・トルエンなどが含まれている為、長時間吸い続けると人体に影響が出てきます。また、火災などにも繋がる為、取り扱い方を間違えない為にも、勉強を兼ねて取得する事をお勧め致します。
儲かる防水屋になるための大事なポイント
ここではどうすれば儲かる防水屋になれるのかを解説していきます。やるべき事は難しい事ではありませんが、仕事に繋がる事ばかりですので、継続してやっていくようにしましょう。
資格を取得するなどスキルアップに努め単価をアップする
上記にあげた3つの資格は出来るだけ取得するようにしましょう。また、資格を取得して 終わりではありません。防水工事は漏水に繋がるので、最初から最後まできっちり仕事を 行わなくてはなりません。向上心を持ち、全ての工程で技術を向上できるように、丁寧な 仕事を心掛けましょう。そして、自分の仕事に自信が持てるようになったら、単価をあげ てもいいでしょう。
営業力を上げる
防水屋さんだけに限った話ではありませんが、ひたすら防水工事をやっていればいいと いうものではありません。現場が入っていない時には、繋がりのあるゼネコンや工務店の 担当者の元へ足を運んだり、電話をしたりして、顔を繋げておくつもりで営業をかけるよ うにしましょう。また、時間のある時に、倉庫や事務所、仕事に使用している車両の中の 片付けや道具の手入れをし、次の仕事が決まったらスムーズに仕事が始められるように準 備をしておくことも重要です。
集客方法を増やす
足を運ぶだけが営業ではありません。自分の力だけでは限界がありますので、下記の便利 な手段も有効利用して集客アップを目指しましょう。
チラシ・ポスティングを利用する
費用は少しかかるかもしれませんが、業者へお願いするなどしチラシの作成、ポス ティングという手もあります。チラシであれば、必要な時まで手元に残しておいても らえるかもしれません。また、チラシは自分で作成出来るという方は、作成費用が抑 えられる為、是非トライしてみましょう。
ホームページを制作し集客する
チラシ作成ポスティングよりも費用はかかりますが、今の時代、会社にホームページ は必須と言えます。会社概要・主要取引先・施工実績なども随時更新出来るため、集 客アピールは法人・民間に対して非常に効果が高いと言えるでしょう。
SNSで事業の発信をする
ホームページ以上に必須と言えるのがSNSです。ツイッター、インスタグラムなどに今からやる防水工事の施工前・施工後や、普段の様子、ちょっとした防水工事にまつわる雑学などの乗せると、あなたの人となりもアピールができ、この人なら安心して仕事を任せられるな、とホームページ以上にアピールはしやすいかと思います。
職場の資格支援、独立サポートを利用する
防水工事の場合、資格取得支援や独立サポートが充実しているのも、独立に向いている職種と言えます。建設業の中でも、若年層からの就業が多いと言われ、経験や実績を早くから積んで独立している事から、独立するという事に抵抗がないのかもしれません。入社する時にも、独立するつもりがあると相談してみてもいいでしょう。
防水工事で独立できるのか
独立するまでの流れとしては
- 防水会社で防水屋としての経験・実績を十分に積む、資格取得を行う
- 独立するまでにゼネコン・工務店や同業者との人脈作りを行う
- 開業・運転資金をしっかり準備する
- 開業届など申請物を出す
独立したら
- スキルアップに務め、単価を上げられるように取り組む
- 「仕事を取るのが仕事」がメインになるので、SNSなどを利用し集客アップにも務める
簡単にまとめるとこのようになります。防水工事は雨の多い日本であれば、ニーズが絶える事なくあります。建設業は作業従事者が高齢化しており、問題にもなっています。若年層の方が、やる気を持って独立すれば稼げる防水屋になれるでしょう。